皮膚外科・体表形成外科の技と理

理を普遍にいかす

皮膚外科・体表形成外科の技と理

■著者 岡崎 睦

定価 7,700円(税込) (本体7,000円+税)
  • A4変型判  208ページ  オールカラー,イラスト400点,写真300点
  • 2023年3月3日刊行
  • ISBN978-4-7583-2192-1

Z形成・局所皮弁の作成法,皮膚移植など皮膚外科,体表形成外科を,理論から実践まで解説した新作

好評の“Tips”シリーズ第3弾は,“Tips”を“理”に変えて,皮膚外科・体表形成外科で行われる手技とコンセプトに特化。
①皮膚外科・体表形成外科の基本事項(手術の体位,麻酔,手術操作,術後管理など),②局所皮弁(Z形成,VY皮弁,横転皮弁,回転皮弁などのデザイン理論とのコツ),③実際の手技(剥離法,縫合法,手術のデザイン,患者年齢・ダウンタイムを考慮した手術),④ティッシュ・エキスパンダーなど,皮膚外科・体表形成外科でよく使われる手技とコンセプトについて理論的に説明し,症例に合わせた実践的なデザインや縫合法を解説。さらに,症例写真の撮影に必要な基本知識と撮影法についても解説した。


序文

前書き

 メジカルビュー社のご厚意により,『外傷処置・小手技の技& Tips』,『傷・創・小外科対応の術&Tips』に続く3冊目となる『皮膚外科・体表形成外科の技と理(ことわり)』を刊行することができました。
 本書では,初めて「理」という言葉が表題に含まれることになりましたが,この三部作で共通して言いたかったことの一つが「理を知り,それを普遍的にいかす(生かす&活かす)」ということです。手技・技・術は,理に裏付けされてはじめて普遍的にいかすことができます。さらに,ここでは,手技・技・術は,良い結果を得るための手段に過ぎないこと,そして,良い結果を得るためには,適切な術前プランと手術デザイン,術後長期にわたる経過観察によって得られるフィードバックが重要であることを,あらためて強調しておきたいと思います。
 理には,科学的な理,臨床的な理,患者さんや医療スタッフの心理,など,さまざまなものがあり,それらをこの三部作で述べてきたつもりです。さらに本書では,形成外科専門医試験の面接試験官としての経験も生かされています。どうか,理に沿った手技・技・術で,より多くの患者さんに最適な医療を提供していただければと思います。
 最後になりましたが,この三部作の出版は,けっして平坦な道ではありませんでしたが,三部作ともにがまん強くお付き合いいただきました,編集部の矢部さん,イラストレーターの片庭さんに,心から感謝いたします。

2023年1 月
東京大学大学院医学系研究科形成外科学分野教授
岡崎 睦
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目次

Ⅰ章 皮弁
 1 Z形成術を自由に&簡単にデザインしよう
 2 1つのZ形成術 v.s. 複数連続Z形成,延長率,延長量は?
 3 瘢痕拘縮に対する,Z形成と横転皮弁
 4 Web型拘縮に入れる5-flap Z形成術
 5 拘縮(短縮)がひどい部分,谷を平らにする場合のZ形成は,角度を大きくとる
 6 皮膚が柔らかい部位で閉創に緊張が強い場合もZ形成の角度を大きく設定する
 7 面での拘縮があると,Z形成術の効果は十分に発揮できない
 8 拘縮の直交方向に余裕があれば,拘縮を横に切って縦に縫う解除法もあり
 9 ピボット・ポイントが動く場合と動かない場合
 10 VY皮弁は厚みがないと動かない
 11 VY皮弁:ショートカットに注意する,ショートカットを生かす
 12 VY皮弁:元にもどる方向に引かれると変形が生じるデザインはしないのが無難(特に顔面)
 13 可動域を考慮せずに引っ張って縫合しても創し開する
 14 皮弁形成,うっかりドッグイヤーの修正による,皮弁の血流悪化に注意

Ⅱ章 皮膚移植
 15 皮膚片を置いて自然に止まる出血点は止血の必要なし
 16 シート植皮の最後に洗いすぎない
 17 下床が硬い部位への植皮,タイオーバーの過圧迫に注意(特に全層植皮)
 18 腱など突出部がある移植床への植皮
 19 低温熱傷のデブリードマンは,出血する層を越えて
 20 拘縮解除後の皮膚移植は「崖」にも植える
 21 顔面の皮膚はり替え,移植床に真皮深層を残して植皮する
 22 汚染創へのメッシュ植皮,部分的に縫縮できても,縫縮しないでメッシュ植皮が安全
 23 瘢痕切除や瘢痕拘縮の解除をすると,思った以上に大きな皮膚欠損
 24 植皮その他のタイオーバーは,術後の肢位や拘縮位を意識して
 25 タイオーバー・安静固定を解除する時期
 26 頬部へ移植する皮膚の候補,耳前部,耳後部,鎖骨上部,鼡径部,どれくらい違うか?
 27 内果下部からの皮膚採取,赤ちゃんも大人も採取可能幅に大差なし
 28 全層皮膚を採取してパジェット型ダーマトームで分層に加工する場合
 29 メスを使って,フリーハンドで鼡径部から分層皮膚を採取する

Ⅲ章 基本的な手技とコンセプト
 30 局所麻酔は剥離するターゲットの層に注射する
 31 凸面での紡錘形切除は,食われたように凹む&どこまでいってもドッグイヤー
 32 剥離は,見ないでやるほうがうまくいく場合もある:面を平らにする剥離法
 33 皮膚のトリミングは,緊張のない状態で必ずデザインしてから
 34 皮膚組織はショートカットに向かう:特に皮弁より植皮
 35 全身麻酔下の頭頸部・顔面の手術は,肩枕をして自由度を上げる
 36 四肢の繊細な手術は,ターニケットの前にエスマルヒで過度に血管を虚脱させない
 37 吸引ドレーンを皮膚から抜く位置は,術後を考慮して
 38 頭皮の手術で吸引ドレーンを入れるとき
 39 植皮がいつも遊離皮弁より低侵襲で患者に優しいとは限らない
 40 副耳,よかれと思って切開を短くしようとすると,凸が残って不満が出ることも
 41 トラップドア,コの字に切って凹ませても再びトラップドア
 42 顔の創は2辺の長さが異なると長い側がギャザーになりやすい。意図的な波打ちデザインが,回避に有効なことも
 43 眼瞼の手術創は,まず最外側を縫合:瞼縁ではない側は外側にずれている
 44 高齢者の眼瞼下垂症手術の余剰皮膚切除,切除量を増やさず,重瞼ラインを上げる
 45 眼瞼黄色腫の切除は,重瞼ラインを意識
 46 頭皮の局所皮弁による再建:植皮併用の可能性を考慮して,挙上する層に注意

Ⅳ章 ティッシュ・エキスパンダー
 47 ティッシュ・エキスパンダー,高さが同じなら,伸び率も結果も同じか?
 48 ティッシュ・エキスパンダー,陥凹部は無効,下床が柔らかい部位は小効
 49 エキスパンダー:ポートを設置する部位は,注入時と次回手術を熟考して
 50 今瘢痕が目立たないことを重視する v.s. 将来禿げることを前提にする
 51 エキスパンダー,皮弁や皮膚の採取部には入れず,その周囲を伸展させる

Ⅴ章 症例写真の撮り方
 52 写真の理論と症例写真の撮り方の基本
 53 症例写真は,近景と遠景の両方を撮ろう
 54 影のない自然なコントラストの顔面症例写真を,通常の診察室で簡単に撮れる方法

■サプリメント
 1 Z形成術が有効である場合は,拘縮解除方向に引くと(拘縮解除位にすると)勝手に皮弁が入れ替わる
 2 関節をまたいで紡錘形に植皮しても,肥厚性瘢痕と拘縮は必発
 3 骨が露出して乾いている創でも,保存的に治らないとは限らない
 4 皮膚が足りないのに,さらに正常皮膚を切除する術式
 5 神経の剥離は,神経だけ剥離しない
 6 頭蓋骨上の植皮,「骨膜が残ってないと生着しない」とは限らない
 7 きれいな肉芽と似て非なる病態
 8 関節部の肥厚性瘢痕は,拘縮解除・植皮で消失する
 9 鼻背再建:前額からの複合組織移植
 10 痛みを感じない患者さん,痛みを表現できない患者さんのギプス/シーネ固定
 11 末梢神経は,縫合すればある程度回復するが,すぐにつながるわけではない
 12 動脈硬化の著しい患者さんは,エアターニケットがあてにできない
 13 長い瘢痕の修正,比較的きれいな部分はあえて切らない。状況によっては2回に分けて
 14 全身麻酔下手術,手台から腕が落ちることのないように
 15 肋軟骨は骨化が進むと感染に弱くなる
 16 ティッシュ・エキスパンダー法は,挿入するときから,摘出時のデザイン(最終的な出来上がり)を詳細に検討しておく

■coffee break
 1 刺青のレーザー治療
 2 局所麻酔での手術が,必ずしも患者さんに優しいとは限らない
 3 英語を学んで海外に勉強に行くよりも
 4 筋肉内脂肪腫のisland flap
 5 友人の手術を請け負う
 6 論文執筆,もっとイントロを大切にしよう
 7 鳩のフン
 8 ボディー2つとレンズ4本の卒業旅行
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