多胎妊娠
妊娠・分娩・新生児管理のすべて
改訂第2版
定価 12,100円(税込) (本体11,000円+税)
- B5判 348ページ オールカラー,イラスト40点,写真144点
- 2024年3月22日刊行
- ISBN978-4-7583-2149-5
電子版
序文
2002年に双胎間輸血症候群(TTTS)に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)が日本で本格的に臨床応用されてから20年以上が経過しました。TTTSに対するFLPの普及により,今まで救命困難だった妊娠中期発症のTTTSの予後が劇的に改善され,一絨毛膜双胎に対する診断や管理のアプローチも大きく変化しました。また,TTTSに対するFLPのわが国の成績を基に2012年にFLPが保険収載されたことも大きな出来事です。これによりFLPはTTTSに対する一般的な医療として認められたこととなります(また,胎児が公にヒトとして認められたともいえます)。
FLPの普及により一絨毛膜双胎の予後が劇的に改善された一方で,羊水過多・過少の診断基準からはずれた予後不良疾患がクローズアップされ,一絨毛膜双胎一児発育不全(selective FGR)やTAPSなどの疾患概念や診断基準も確立され,自然史や予後が明らかになってきました。また,それらに対する治療法も開発され,さまざまな臨床研究からのデータが蓄積されてきています。日本から発信されたデータも少なくありません。
2007年にJapan Fetoscopy Group(JFG)の編集執筆で,膜性診断のポイントからTTTSの病態と診断,そしてFLPによる治療を中心に,当時の一絨毛膜双胎管理のほぼすべてを『一絨毛膜双胎 基本からUpdateまで』としてまとめて出版しました。その後,2015年には,一絨毛膜双胎のみならず,二絨毛膜双胎や三胎の管理,早産管理,妊娠高血圧症候群,分娩管理,新生児管理などを加え,多胎妊娠全体についての理解を深める参考書として『多胎妊娠 妊娠・分娩・新生児管理のすべて』を出版させていただきました。しかし,それから10年弱経過することで,2015年当時よりも,さらに多胎妊娠について新しい知見が加わってきました。TRAP sequence(無心体)に対するラジオ波血流遮断術も保険収載され,selective FGRに対するFLPの成績も集積されてきています。また,TTTS stageⅠに対する治療戦略の考え方も変わってきています。多胎妊娠の基本的な疫学や卵性および膜性診断,先天異常の発生など,変わらなくとも多胎妊娠の管理の基本として重要な部分も沢山あります。
今回の改訂では,最新知識のアップデートにとどまらず,基本的な内容の充実も図り,前回以上に多胎妊娠全体の理解を深める参考書として新たに編集し直しました。執筆者もこの分野のパイオニアのみならず,実際の臨床や研究に直接携わっている若手のエキスパートにも依頼し,内容の刷新と知識の深掘りができるようにまとめてもらい,この参考書一冊で,多胎妊娠の全体が理解できるように編集しています。この,皆さんが手に取っている『改訂第2版 多胎妊娠』が,多胎妊娠にかかわるすべての医療関係者の参考書として,今日からの臨床や研究に少しでも役立ち,結果としてすべての多胎妊娠の家族のためになることを願ってやみません。
2024年3月
聖隷浜松病院産婦人科・総合周産期母子医療センター センター長/産科部長
村越 毅
FLPの普及により一絨毛膜双胎の予後が劇的に改善された一方で,羊水過多・過少の診断基準からはずれた予後不良疾患がクローズアップされ,一絨毛膜双胎一児発育不全(selective FGR)やTAPSなどの疾患概念や診断基準も確立され,自然史や予後が明らかになってきました。また,それらに対する治療法も開発され,さまざまな臨床研究からのデータが蓄積されてきています。日本から発信されたデータも少なくありません。
2007年にJapan Fetoscopy Group(JFG)の編集執筆で,膜性診断のポイントからTTTSの病態と診断,そしてFLPによる治療を中心に,当時の一絨毛膜双胎管理のほぼすべてを『一絨毛膜双胎 基本からUpdateまで』としてまとめて出版しました。その後,2015年には,一絨毛膜双胎のみならず,二絨毛膜双胎や三胎の管理,早産管理,妊娠高血圧症候群,分娩管理,新生児管理などを加え,多胎妊娠全体についての理解を深める参考書として『多胎妊娠 妊娠・分娩・新生児管理のすべて』を出版させていただきました。しかし,それから10年弱経過することで,2015年当時よりも,さらに多胎妊娠について新しい知見が加わってきました。TRAP sequence(無心体)に対するラジオ波血流遮断術も保険収載され,selective FGRに対するFLPの成績も集積されてきています。また,TTTS stageⅠに対する治療戦略の考え方も変わってきています。多胎妊娠の基本的な疫学や卵性および膜性診断,先天異常の発生など,変わらなくとも多胎妊娠の管理の基本として重要な部分も沢山あります。
今回の改訂では,最新知識のアップデートにとどまらず,基本的な内容の充実も図り,前回以上に多胎妊娠全体の理解を深める参考書として新たに編集し直しました。執筆者もこの分野のパイオニアのみならず,実際の臨床や研究に直接携わっている若手のエキスパートにも依頼し,内容の刷新と知識の深掘りができるようにまとめてもらい,この参考書一冊で,多胎妊娠の全体が理解できるように編集しています。この,皆さんが手に取っている『改訂第2版 多胎妊娠』が,多胎妊娠にかかわるすべての医療関係者の参考書として,今日からの臨床や研究に少しでも役立ち,結果としてすべての多胎妊娠の家族のためになることを願ってやみません。
2024年3月
聖隷浜松病院産婦人科・総合周産期母子医療センター センター長/産科部長
村越 毅
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目次
1 多胎妊娠の動向と疫学
多胎妊娠の動向と疫学 室月 淳
2 多胎妊娠の発生と病理
卵性診断と膜性診断 村越 毅
膜性診断の実際
超音波診断による膜性診断 村越 毅
分娩後の胎盤による膜性診断 松岡健太郎
生殖補助医療(ART)による多胎妊娠 村越 毅
先天異常の発生 室月 淳
一絨毛膜双胎における胎盤吻合血管 今野寛子,村越 毅
3 多胎妊娠の診断と管理
妊娠初期
多胎妊娠の診断,膜性診断,分娩予定日・在胎週数の決定法 村越 毅
遺伝学的検査 室月 淳
多胎妊娠時の心理的ケア 今すぐできる家族支援とは 高橋雄一郎
妊娠中後期
早産リスクの評価 林 周作
臍帯・胎盤の評価 佐治正太,長谷川潤一
双胎の胎児発育評価,胎位の評価 岩垣重紀
双胎の血流評価,心機能評価 鷹野真由実
双胎の胎児心拍数モニタリング 岩垣重紀
多胎妊娠の合併症
切迫流早産の管理 林 周作
前期破水の管理 住江正大
妊娠高血圧症候群の管理 多胎妊娠は妊娠高血圧症候群の重要なリスク因子である 田中幹二,大石舞香
妊娠糖尿病の管理 森川 守
胎児発育不全の管理 石井桂介
MD双胎に特徴的な合併症
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎における異常妊娠の分類 村越 毅
双胎間輸血症候群(TTTS)の病態と診断 中田雅彦
双胎間輸血症候群(TTTS)の治療 和田誠司
一児発育不全(selective FGR)の診断と治療 石井桂介
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎一児死亡 中田雅彦
無心体双胎(TRAP sequence)の診断と治療 和形麻衣子
twin anemia-polycythemia sequence(TAPS)の診断と治療 石井桂介
結合体双胎 今野寛子
reversal of TTTS 中田雅彦
双胎間羊水不均衡 杉林里佳
MM双胎の診断と管理
一絨毛膜一羊膜(MM)双胎の診断と管理 小澤克典
双胎妊娠の外来管理
やむをえず一次施設で双胎を管理する際の留意点 林 聡
双胎外来管理の実際 山本瑠美子,石井桂介
三胎妊娠の管理 川口晴菜
減胎とfeticide 室月 淳
4 分娩時期・様式の選択と注意すべき合併症
双胎の分娩時期 山本 亮
双胎の分娩管理
分娩様式の決定 山本 亮
双胎経腟分娩の実際と注意点 村越 毅
双胎分娩時の麻酔 佐藤正規
双胎分娩時の新生児管理 杉浦 弘
5 新生児の管理と予後
多胎児の長期予後と予後にかかわる周産期因子 和田友香,諫山哲哉
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎児の新生児循環管理の特殊性 豊島勝昭
多胎妊娠の動向と疫学 室月 淳
2 多胎妊娠の発生と病理
卵性診断と膜性診断 村越 毅
膜性診断の実際
超音波診断による膜性診断 村越 毅
分娩後の胎盤による膜性診断 松岡健太郎
生殖補助医療(ART)による多胎妊娠 村越 毅
先天異常の発生 室月 淳
一絨毛膜双胎における胎盤吻合血管 今野寛子,村越 毅
3 多胎妊娠の診断と管理
妊娠初期
多胎妊娠の診断,膜性診断,分娩予定日・在胎週数の決定法 村越 毅
遺伝学的検査 室月 淳
多胎妊娠時の心理的ケア 今すぐできる家族支援とは 高橋雄一郎
妊娠中後期
早産リスクの評価 林 周作
臍帯・胎盤の評価 佐治正太,長谷川潤一
双胎の胎児発育評価,胎位の評価 岩垣重紀
双胎の血流評価,心機能評価 鷹野真由実
双胎の胎児心拍数モニタリング 岩垣重紀
多胎妊娠の合併症
切迫流早産の管理 林 周作
前期破水の管理 住江正大
妊娠高血圧症候群の管理 多胎妊娠は妊娠高血圧症候群の重要なリスク因子である 田中幹二,大石舞香
妊娠糖尿病の管理 森川 守
胎児発育不全の管理 石井桂介
MD双胎に特徴的な合併症
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎における異常妊娠の分類 村越 毅
双胎間輸血症候群(TTTS)の病態と診断 中田雅彦
双胎間輸血症候群(TTTS)の治療 和田誠司
一児発育不全(selective FGR)の診断と治療 石井桂介
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎一児死亡 中田雅彦
無心体双胎(TRAP sequence)の診断と治療 和形麻衣子
twin anemia-polycythemia sequence(TAPS)の診断と治療 石井桂介
結合体双胎 今野寛子
reversal of TTTS 中田雅彦
双胎間羊水不均衡 杉林里佳
MM双胎の診断と管理
一絨毛膜一羊膜(MM)双胎の診断と管理 小澤克典
双胎妊娠の外来管理
やむをえず一次施設で双胎を管理する際の留意点 林 聡
双胎外来管理の実際 山本瑠美子,石井桂介
三胎妊娠の管理 川口晴菜
減胎とfeticide 室月 淳
4 分娩時期・様式の選択と注意すべき合併症
双胎の分娩時期 山本 亮
双胎の分娩管理
分娩様式の決定 山本 亮
双胎経腟分娩の実際と注意点 村越 毅
双胎分娩時の麻酔 佐藤正規
双胎分娩時の新生児管理 杉浦 弘
5 新生児の管理と予後
多胎児の長期予後と予後にかかわる周産期因子 和田友香,諫山哲哉
一絨毛膜二羊膜(MD)双胎児の新生児循環管理の特殊性 豊島勝昭
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双胎・多胎の管理にこの1冊! 待望の改訂版
多胎妊娠全体についての理解を深めるための教科書が満を持しての改訂。
出生前診断や遺伝学的検査,早産管理の進歩,妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病ガイドラインの改定などを踏まえて,胎児の心機能,胎盤吻合血管による病態の知識,早産管理,切迫早産管理を中心に最新のエビデンスに基づきアップデート。一絨毛膜二羊膜双胎についても,selective FGR,多胎間輸血症候群(TTTS)の知識を中心に管理指針,治療方法など大幅に刷新。