新 眼科診察クローズアップ
定価 9,900円(税込) (本体9,000円+税)
- B5変型判 244ページ オールカラー,イラスト65点,写真400点
- 2023年9月29日刊行
- ISBN978-4-7583-1643-9
電子版
序文
最近の眼科医療機器の進歩には目を見張るものがある。広角眼底撮影,OCTなど枚挙に暇がない。大学病院で診察していると,予診で検査がオーダーされ,視力,眼圧は言うに及ばず,角膜形状解析,スペキュラーマイクロスコープ,広角眼底撮影,眼底のOCTなどなど多くの検査結果とともに診察室に回ってくることがある。自分で何もしていないのに,たいていの疾患は診断できてしまいそうである。しかし,これは本来の診察の姿ではない。いつも検査機器,設備がそろった環境で診察できるわけではないし,疾患のなかにはどんな精密検査よりも患者さんの一言やちょっとした診察所見が診断のカギになる場合があるからである。本来の眼科診療はまず問診と診察ユニット内の検査(細隙灯と眼底鏡)から狙いを定めて,必要と思われる検査をオーダーしていくべきだろう。
「群盲象を撫でる」という言葉がある。本来あまり良い意味で使われないが,私は診察や問診は象を撫でる作業だと思っている。「しっぽが細い」「耳が大きい」などと何かしら診断につながるヒントが得られればしめたものである。診断のヒントは問診にも診察にも検査機器による検査結果にも,ちらばっている。どこからかヒントを掴み,ヒントの数を増すための検査を加えていくことが眼科診療のコツと言えるかも知れない。本書は疾患をかぎつける嗅覚を鍛えること,知識や情報を再確認することを目指して作った本である。
本書の前身である『眼科診察クローズアップ』は「眼科の診察の本を作りませんか」というメジカルビュー社吉川みゆき女史の一言から始まった。2014年に刊行されて以来,幸いにも好評を博し,版を重ねることができた。しかし10年の間に眼科医療も医療機器も進歩し,版を新たにする必要が生じてきた。私自身の所属も杏林アイセンターに変わったが,ここには多くの臨床家,専門家が揃っている。こうした背景から平形明人先生,慶野博先生とともに本書,『新眼科診察クローズアップ』を企画し,このたび上梓することとなった。
本書は若手の眼科医に向けての指南書として企画されたものであるが,ベテランの眼科医の方にもこんな診かたがあったのかと再確認してもらえる部分もあると思う。新しい検査法,日々進化する検査機器を取り入れ,診療の精度を上げることも重要であるが,眼科医,医師としての基本的な考え方を備え,実践的な眼科の診察法を修得することは同じくらい重要だと考えている。このために本書が役立つようなら望外の幸せである。
最後にメジカルビュー社の吉川みゆき女史の努力なしには本書が日の目をみることはなかったことを記し,改めて深謝したい。
2023年8月
編集を代表して
山田 昌和
「群盲象を撫でる」という言葉がある。本来あまり良い意味で使われないが,私は診察や問診は象を撫でる作業だと思っている。「しっぽが細い」「耳が大きい」などと何かしら診断につながるヒントが得られればしめたものである。診断のヒントは問診にも診察にも検査機器による検査結果にも,ちらばっている。どこからかヒントを掴み,ヒントの数を増すための検査を加えていくことが眼科診療のコツと言えるかも知れない。本書は疾患をかぎつける嗅覚を鍛えること,知識や情報を再確認することを目指して作った本である。
本書の前身である『眼科診察クローズアップ』は「眼科の診察の本を作りませんか」というメジカルビュー社吉川みゆき女史の一言から始まった。2014年に刊行されて以来,幸いにも好評を博し,版を重ねることができた。しかし10年の間に眼科医療も医療機器も進歩し,版を新たにする必要が生じてきた。私自身の所属も杏林アイセンターに変わったが,ここには多くの臨床家,専門家が揃っている。こうした背景から平形明人先生,慶野博先生とともに本書,『新眼科診察クローズアップ』を企画し,このたび上梓することとなった。
本書は若手の眼科医に向けての指南書として企画されたものであるが,ベテランの眼科医の方にもこんな診かたがあったのかと再確認してもらえる部分もあると思う。新しい検査法,日々進化する検査機器を取り入れ,診療の精度を上げることも重要であるが,眼科医,医師としての基本的な考え方を備え,実践的な眼科の診察法を修得することは同じくらい重要だと考えている。このために本書が役立つようなら望外の幸せである。
最後にメジカルビュー社の吉川みゆき女史の努力なしには本書が日の目をみることはなかったことを記し,改めて深謝したい。
2023年8月
編集を代表して
山田 昌和
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目次
プレテスト [山田昌和,慶野 博]
Ⅰ 問診と視診(まずは「診察」しましょう)
問診と視診,検査のクロストーク [山田昌和]
問診の進め方 [山田昌和]
診断につながる特徴的な症状 [山田昌和]
Ⅱ ペンライト1本で「診察」できること
瞳孔反応の正常と異常 [渡辺敏樹]
眼位の正常と異常 [鈴木由美]
眼球運動の正常と異常 [鈴木由美]
眼瞼の位置,動きの正常と異常 [鈴木由美]
Ⅲ 視力・屈折は眼科診療の基本
視力・屈折検査のみかた [富田 茜]
小児の視力の測り方,推定法 [富田 茜]
眼鏡のチェックポイント [富田 茜]
コンタクトレンズのチェックポイント [藤井かんな]
Ⅳ スリットランプで押さえたいポイント
涙液のチェックポイント [重安千花]
結膜のチェックポイント [重安千花]
眼瞼のチェックポイント [重安千花]
角膜上皮のチェックポイント [山田昌和]
角膜実質のチェックポイント [山田昌和]
角膜内皮のチェックポイント [山田昌和]
角膜後面沈着物と前房炎症のチェックポイント [慶野 博]
虹彩のチェックポイント [渡辺交世]
水晶体のチェックポイント [松木奈央子]
前房深度のチェックポイント [宇治幸隆]
隅角のチェックポイント [齋藤恒浩]
眼圧計の使い分けとコツ [山本 雅,齋藤恒浩]
Ⅴ 眼底検査で押さえたいポイント
視神経のチェックポイント(主に緑内障と類縁疾患) [北 善幸]
視神経のチェックポイント(主に神経眼科的疾患) [林 勇海]
網膜血管のチェックポイント [髙橋 綾,厚東隆志]
黄斑部のチェックポイント [中山真紀子,厚東隆志]
白斑とドルーゼンのチェックポイント [石田友香]
網膜出血のチェックポイント [石田友香]
眼底観察法と周辺部網膜のチェックポイント [水野雅春,厚東隆志]
硝子体のチェックポイント [中島康介,廣田和成]
Ⅵ 確定診断のための検査:オーダーの仕方と結果の解釈
涙液・涙道検査 [津田麻祐子]
細菌学的検査 [久須見有美]
免疫クロマトグラフィー検査 [津田麻祐子]
角膜形状解析 [久須見有美]
隅角の画像検査(前眼部OCT,UBM,ゴニオスコープ) [矢田長洋,齋藤恒浩]
角膜内皮検査 [久須見有美]
OCT(黄斑編) [片岡恵子]
OCT(緑内障編) [北 善幸]
OCT angiography(OCTA) [片岡恵子]
蛍光眼底撮影(FAとIA) [中山真紀子]
眼底自発蛍光(FAF) [齋藤翔子,慶野 博]
網膜電図(ERG) [伊東裕二]
視覚誘発電位(VEP) [林 勇海]
視野検査(Goldmann視野計) [安藤良将]
視野検査(静的視野) [安藤良将]
特殊な視野検査 [新井千賀子]
超音波検査 [中島康介,厚東隆志]
眼位検査と眼球運動検査 [満川忠宏]
両眼視,立体視の検査 [満川忠宏]
血液検査(ぶどう膜炎,膠原病を想定) [長堀克哉,慶野 博]
血液検査(視神経疾患,眼球運動障害を想定) [齋藤翔子,慶野 博]
CT,MRI (眼内・眼窩病変) [山田健司,柳沼重晴]
CT,MRI (視神経・脳病変) [長堀克哉,渡辺敏樹]
病理検査 [山田健司,柳沼重晴]
Ⅰ 問診と視診(まずは「診察」しましょう)
問診と視診,検査のクロストーク [山田昌和]
問診の進め方 [山田昌和]
診断につながる特徴的な症状 [山田昌和]
Ⅱ ペンライト1本で「診察」できること
瞳孔反応の正常と異常 [渡辺敏樹]
眼位の正常と異常 [鈴木由美]
眼球運動の正常と異常 [鈴木由美]
眼瞼の位置,動きの正常と異常 [鈴木由美]
Ⅲ 視力・屈折は眼科診療の基本
視力・屈折検査のみかた [富田 茜]
小児の視力の測り方,推定法 [富田 茜]
眼鏡のチェックポイント [富田 茜]
コンタクトレンズのチェックポイント [藤井かんな]
Ⅳ スリットランプで押さえたいポイント
涙液のチェックポイント [重安千花]
結膜のチェックポイント [重安千花]
眼瞼のチェックポイント [重安千花]
角膜上皮のチェックポイント [山田昌和]
角膜実質のチェックポイント [山田昌和]
角膜内皮のチェックポイント [山田昌和]
角膜後面沈着物と前房炎症のチェックポイント [慶野 博]
虹彩のチェックポイント [渡辺交世]
水晶体のチェックポイント [松木奈央子]
前房深度のチェックポイント [宇治幸隆]
隅角のチェックポイント [齋藤恒浩]
眼圧計の使い分けとコツ [山本 雅,齋藤恒浩]
Ⅴ 眼底検査で押さえたいポイント
視神経のチェックポイント(主に緑内障と類縁疾患) [北 善幸]
視神経のチェックポイント(主に神経眼科的疾患) [林 勇海]
網膜血管のチェックポイント [髙橋 綾,厚東隆志]
黄斑部のチェックポイント [中山真紀子,厚東隆志]
白斑とドルーゼンのチェックポイント [石田友香]
網膜出血のチェックポイント [石田友香]
眼底観察法と周辺部網膜のチェックポイント [水野雅春,厚東隆志]
硝子体のチェックポイント [中島康介,廣田和成]
Ⅵ 確定診断のための検査:オーダーの仕方と結果の解釈
涙液・涙道検査 [津田麻祐子]
細菌学的検査 [久須見有美]
免疫クロマトグラフィー検査 [津田麻祐子]
角膜形状解析 [久須見有美]
隅角の画像検査(前眼部OCT,UBM,ゴニオスコープ) [矢田長洋,齋藤恒浩]
角膜内皮検査 [久須見有美]
OCT(黄斑編) [片岡恵子]
OCT(緑内障編) [北 善幸]
OCT angiography(OCTA) [片岡恵子]
蛍光眼底撮影(FAとIA) [中山真紀子]
眼底自発蛍光(FAF) [齋藤翔子,慶野 博]
網膜電図(ERG) [伊東裕二]
視覚誘発電位(VEP) [林 勇海]
視野検査(Goldmann視野計) [安藤良将]
視野検査(静的視野) [安藤良将]
特殊な視野検査 [新井千賀子]
超音波検査 [中島康介,厚東隆志]
眼位検査と眼球運動検査 [満川忠宏]
両眼視,立体視の検査 [満川忠宏]
血液検査(ぶどう膜炎,膠原病を想定) [長堀克哉,慶野 博]
血液検査(視神経疾患,眼球運動障害を想定) [齋藤翔子,慶野 博]
CT,MRI (眼内・眼窩病変) [山田健司,柳沼重晴]
CT,MRI (視神経・脳病変) [長堀克哉,渡辺敏樹]
病理検査 [山田健司,柳沼重晴]
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