技術認定試験突破のための
ラパS
[Web動画付]
定価 7,920円(税込) (本体7,200円+税)
- A4判 104ページ オールカラー,イラスト60点,写真75点
- 2023年3月31日刊行
- ISBN978-4-7583-1548-7
電子版
序文
「技術認定試験には魔物が潜んでいる」
かつてそう聞いた。どれほど上手くても落ちる。何度も受からない教授がいる。周りを見ていても,そう感じる。他の領域はともかく,大腸の技術認定試験の合格率は 20~30%台前半ととても低い。
一方で,毎年合格者を出す大学医局がある。ハイボリュームセンターがある。どういうことなのだろう。手技の上手い若手が集っているのか。上司の指導が素晴らしいのか。若手の執刀数が多いのか。すべてを否定するわけではないが,もっと重要な要素がある。とにかく「情報」があるのだ。受かりやすい症例,受かりやすい手技。助手やスコピストの選び方。この「情報」を,首都のハイボリュームセンターにかつて在籍し,多くの審査員外科医とも交流する機会に恵まれた筆者は豊富に入手することができた。そして卒後6年目に撮ったビデオで合格した。筆者が飛び抜けて器用なのではない。経験数は多めではあったが,群を抜いていたわけではない。ただ,「受かりやすい方法」を熟知していたのだ。
その後地方で勤務をし,「情報」をほとんどもたない中堅・熟練外科医が不合格になるのを何度も目にした。手術は上手い。しかし,受からない。
技術認定の資格を得るために躍起になることは,くだらない。もっていなくとも素晴らしい外科医は大勢いる。それは本質であろうが,そんな言葉は,少なくとも若手の耳には届かないだろう。とにかく技術認定医を取りたい,その一心で修業に励む外科医たちのために,この本は書かれた。技術認定を目指すことで,あなたの外科医としてのレベルが上がるのであれば,一生懸命に目指すことは悪いことではない。
本来,手術手技を評価することは難しい。手術は数値化できる要素ばかりではないからだ。しかし,フィギュアスケートだって点数で勝ち負けを決めている。そこには,高い評価を得やすいポイントがあるはずなのだ。評価者によって多少のブレがあるのは仕方ない。ブレを突き抜けた手術をすればよいだけだ。
本書は,東西で筆者が収集した,技術認定試験を突破するための「情報」を散りばめて作られた。しかしただの裏ワザ集ではない。安全なアプローチとはなにか,正確な(そして外科的な)解剖知識とはなにかを学び,知識を増やし,より高い技術を持てるように工夫した。本書は,試験のハードルを軽々と超えるような,そんなレベルを設定している。筆者は当代随一の外科医ではない。が,著名な外科医たちの濃厚な指導を受け,手術を見てきた。情報で筆者に勝るものはいまい。
もちろん,技術認定試験の向こうにある直腸やロボット支援下S状結腸切除などを見据えて作っていることは言うまでもない。あなたはさっさとこの資格を得て,次のステップに進んでほしい。そしていつかどこかで,誰かの大切な人を鮮やかに救ってほしいと願うのである。
2023年3月 茅ヶ崎の病院,手術室5番にて
中山祐次郎
かつてそう聞いた。どれほど上手くても落ちる。何度も受からない教授がいる。周りを見ていても,そう感じる。他の領域はともかく,大腸の技術認定試験の合格率は 20~30%台前半ととても低い。
一方で,毎年合格者を出す大学医局がある。ハイボリュームセンターがある。どういうことなのだろう。手技の上手い若手が集っているのか。上司の指導が素晴らしいのか。若手の執刀数が多いのか。すべてを否定するわけではないが,もっと重要な要素がある。とにかく「情報」があるのだ。受かりやすい症例,受かりやすい手技。助手やスコピストの選び方。この「情報」を,首都のハイボリュームセンターにかつて在籍し,多くの審査員外科医とも交流する機会に恵まれた筆者は豊富に入手することができた。そして卒後6年目に撮ったビデオで合格した。筆者が飛び抜けて器用なのではない。経験数は多めではあったが,群を抜いていたわけではない。ただ,「受かりやすい方法」を熟知していたのだ。
その後地方で勤務をし,「情報」をほとんどもたない中堅・熟練外科医が不合格になるのを何度も目にした。手術は上手い。しかし,受からない。
技術認定の資格を得るために躍起になることは,くだらない。もっていなくとも素晴らしい外科医は大勢いる。それは本質であろうが,そんな言葉は,少なくとも若手の耳には届かないだろう。とにかく技術認定医を取りたい,その一心で修業に励む外科医たちのために,この本は書かれた。技術認定を目指すことで,あなたの外科医としてのレベルが上がるのであれば,一生懸命に目指すことは悪いことではない。
本来,手術手技を評価することは難しい。手術は数値化できる要素ばかりではないからだ。しかし,フィギュアスケートだって点数で勝ち負けを決めている。そこには,高い評価を得やすいポイントがあるはずなのだ。評価者によって多少のブレがあるのは仕方ない。ブレを突き抜けた手術をすればよいだけだ。
本書は,東西で筆者が収集した,技術認定試験を突破するための「情報」を散りばめて作られた。しかしただの裏ワザ集ではない。安全なアプローチとはなにか,正確な(そして外科的な)解剖知識とはなにかを学び,知識を増やし,より高い技術を持てるように工夫した。本書は,試験のハードルを軽々と超えるような,そんなレベルを設定している。筆者は当代随一の外科医ではない。が,著名な外科医たちの濃厚な指導を受け,手術を見てきた。情報で筆者に勝るものはいまい。
もちろん,技術認定試験の向こうにある直腸やロボット支援下S状結腸切除などを見据えて作っていることは言うまでもない。あなたはさっさとこの資格を得て,次のステップに進んでほしい。そしていつかどこかで,誰かの大切な人を鮮やかに救ってほしいと願うのである。
2023年3月 茅ヶ崎の病院,手術室5番にて
中山祐次郎
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目次
第1章 いざ実践! 手技の実際
STEP- 0 適切な症例選択
どんな患者さんがよいか?
どんなメンバーがよいか?
STEP- 1 体位,ポート挿入
体位
ポート挿入の前に
ポート挿入
STEP- 2 術野を展開する
小腸の排除による視野の確保
病変の確認
子宮および腹膜反転部の挙上
STEP- 3 S状結腸の剥離・授動
内側アプローチ
IMAの処理
LCAとIMVの処理
外側からの授動
STEP- 4 直腸の剥離・授動
直腸の区分け
直腸の剥離と授動
STEP- 5 直腸間膜の処理
腹側2時→8時までの処理
腹側10時→交通するまでの処理
上下,上下でクランプする
STEP- 6 直腸切離
直腸切離に用いる機器
直腸の切離
STEP- 7 小開腹操作
カメラを抜く
小開腹操作
STEP- 8 腸管吻合
吻合の前に
腸管の吻合
おまけ:大腸手術の2つの会社製品と覚え方
STEP- 9 リークテスト・ドレーン挿入・トロッカー抜去
リークテスト
ドレーン挿入
トロッカー抜去
第2章 セルフトレーニングの方法
修行-0 トレーニングで認識すべきこと
修行-1 体腔内結紮をマスターせよ
修行-2 左手でラパは決まる
修行-3 評価シートを活用せよ
第3章 受験者のリアルボイスから技術認定試験を紐解く
その1 データでみる技術認定試験
その2 ある匿名ドクターからの注意喚起
その3 実際の審査コメント(要約)を紹介―注意点はココだ!
これから受験する先生へ
● コラム
前立ちの上司が下手だったら
最速で受かった人たちのキャリア
D3よりD2が受かりやすい?
デバイスはハーモニック? 電気メス? リガシュア?
リークテストの圧
STEP- 0 適切な症例選択
どんな患者さんがよいか?
どんなメンバーがよいか?
STEP- 1 体位,ポート挿入
体位
ポート挿入の前に
ポート挿入
STEP- 2 術野を展開する
小腸の排除による視野の確保
病変の確認
子宮および腹膜反転部の挙上
STEP- 3 S状結腸の剥離・授動
内側アプローチ
IMAの処理
LCAとIMVの処理
外側からの授動
STEP- 4 直腸の剥離・授動
直腸の区分け
直腸の剥離と授動
STEP- 5 直腸間膜の処理
腹側2時→8時までの処理
腹側10時→交通するまでの処理
上下,上下でクランプする
STEP- 6 直腸切離
直腸切離に用いる機器
直腸の切離
STEP- 7 小開腹操作
カメラを抜く
小開腹操作
STEP- 8 腸管吻合
吻合の前に
腸管の吻合
おまけ:大腸手術の2つの会社製品と覚え方
STEP- 9 リークテスト・ドレーン挿入・トロッカー抜去
リークテスト
ドレーン挿入
トロッカー抜去
第2章 セルフトレーニングの方法
修行-0 トレーニングで認識すべきこと
修行-1 体腔内結紮をマスターせよ
修行-2 左手でラパは決まる
修行-3 評価シートを活用せよ
第3章 受験者のリアルボイスから技術認定試験を紐解く
その1 データでみる技術認定試験
その2 ある匿名ドクターからの注意喚起
その3 実際の審査コメント(要約)を紹介―注意点はココだ!
これから受験する先生へ
● コラム
前立ちの上司が下手だったら
最速で受かった人たちのキャリア
D3よりD2が受かりやすい?
デバイスはハーモニック? 電気メス? リガシュア?
リークテストの圧
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手技の解説はもちろん、試験突破に役立つ情報をこれでもかと詰め込んだ“情報系手術本”
日本内視鏡外科学会(JSES)の技術認定医試験を目指す消化器外科医のために、腹腔鏡下S状結腸切除術の“高い技術”とは何かについて徹底解説!
術式の流れに沿って、安全なアプローチと正確な(外科的な)解剖知識を豊富な図・イラストとともにビジュアルに詳解。術式をとことん言語化することにこだわり,術者・助手の細かい動作を読者がイメージしやすい記載となっている。ポイントとなる手技はストリーミング動画も閲覧可能。
さらに、合格・不合格を問わず試験経験者に行ったアンケート調査から、反省点・リカバリーポイントを明らかに。技術認定試験の評価ポイントを炙り出し、「受かりやすい情報」を散りばめた。
独自で行えるトレーニング方法も伝授し、指導医が不在でも手技力向上を目指せる1冊。