産科セッティングで行う

母体の心血管エコー
[Web動画付]

母体の心血管エコー[Web動画付]

■監修 木村 正

■編集 吉松 淳
神谷 千津子

定価 6,050円(税込) (本体5,500円+税)
  • i_movie.jpg
  • A5判  200ページ  2色(一部カラー),イラスト50点,写真200点
  • 2021年3月28日刊行
  • ISBN978-4-7583-1764-1

妊婦の管理に活用できる母体の心血管エコーを豊富な動画と画像で解説!

妊婦なら誰でも起こりうる産科出血,妊娠高血圧症候群,無痛分娩や帝王切開の輸液管理の評価に役立つ心血管エコーについて,一般産科医が心血管の簡単な評価を行い,適切な水分管理はもちろん,高次施設に適切かつスムーズに搬送することに役立つ書籍。
豊富な動画と画像により,妊娠時の母体心血管のチェックポイント,症状・シチュエーションごとの評価法を理解できる。


序文

巻巻頭言

そうだ,エコーがある!

 今では産科領域で毎日のように使われている超音波断層(エコー)検査ですが,超音波の人体への応用は1950年代になってようやく始まった,画像診断としては比較的新しい検査法です。私が研修医のときには経腟エコーはなく,巨大なコンパウンドスキャン装置が「超音波室」という真っ暗な部屋に置かれていました。Bモードスキャンによる胎児エコー検査が広く行われるようになったのは1980年代半ば以降で,今ではエコー検査が機械の向上と低価格化により,産婦人科診療にいつでも使え,なくてはならない時代になりました。
 骨と空気が苦手なエコー検査ですが,他は体内のどこでもリアルタイムにみることができるはずなのに,産婦人科医は子宮・卵巣や,胎児・胎盤以外の臓器をあまりみません。エコー検査は循環の観察をリアルタイムで行うことが可能なので,妊産婦が“何となくおかしい”“本当に状態が悪い”“急に全身状態が悪くなってきた”などのときに,その原因が心血管系にあるのかどうかの大まかな検索に適しています。大まかな評価ができて,自分で対応することが適切なのか,他の診療科・他の施設の応援を頼むべきなのかの判断を,リアルタイムで行うことができれば,日常診療でこんなに心強いことはありません。
 本書はそのようなエコー検査の長所を最大限に生かして,せっかくそばにあるエコー装置を妊産婦の全身状態の把握のために使えるよう,また妊産婦独特の循環系の変化を理解しつつ検査ができるよう書かれています。心エコーはセクタープローブがないと・・・とお思いの先生! そんなことはありません。本書ではセクタープローブとコンベックスプローブの画像の比較写真をふんだんに掲載しています。身近にあるコンベックスプローブでも心血管系は案外よくみえるのです。
 「そうだ,エコーがある!」何か変だと思った時に,ささっと心血管系の評価ができればこれほど心強いことはありません。是非,本書を用いて日々の診療の幅を広げ,心のゆとりを持っていただきたいと思います。

2021年3月
大阪大学大学院医学系研究科産科婦人科学講座 教授
木村 正

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序 文

 本書のきっかけは,2018年に大阪で開催された日本妊娠高血圧学会のハンズオンセミナーです。本書の監修である木村正先生と執筆者の一人である味村和哉先生が企画,編集の神谷千津子先生が講師をつとめました。
 超音波検査そのものには馴染みのある産婦人科医ですが,母体の心臓に超音波を当てるということを普段はやっていません。超音波に慣れているという強みを生かして,産科セッティングのコンベックスプローブで心臓をみてみようという企画は大盛況で,ハンズオンへの登録に間に合わなかった参加者も見学という形で興味を示してくれました。多くの産婦人科医が心臓超音波検査の必要性を感じているのだなと実感できた機会となりました。
 実際,必要性を感じていても何で学べばいいのだろう,どこから始めればいいのだろう…心臓超音波の本を今更開いても難しいし,専門的すぎるし,まず用語がわかりにくい…そう思っている産婦人科医は少なくないと思います。
 この本は産婦人科医の目線で,産婦人科医の慣れた機械でできることをわかりやすく解説した本です。「今さら聞けない初歩の初歩」から「少し慣れてここまでできる」まで,順序立てて解説しています。もちろん産科セッティングの限界もあるわけで,そこもしっかりと書いてあります。
 是非,手にとって診療にお役立ていただければ幸いです。

2021年3月
国立循環器病研究センター産婦人科部 部長
吉松 淳
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目次

Ⅰ章 母体の心血管エコーをみるメリット
  産科救急,産科麻酔における母体心血管エコー

Ⅱ章 心血管エコーの基礎
 1. 心血管エコーでわかること
  循環器科医は心血管エコーで何をみる?
  産科でも有用な心血管エコー
 2. 断層法(B モード法)
  B モード法とは
  B モード法の施行方法
 3. M モード法
  M モード法とは
  M モード法の施行方法
  M モード法での注意点
 4. ドプラ法:パルスドプラ法・連続波ドプラ法・カラードプラ法
  パルスドプラ法
  連続波ドプラ法
  カラードプラ法
 5. プローブの位置と見えかた
  コンベックスプローブ
  セクタプローブ
  
Ⅲ章 機器の準備とセッティング
 1. プローブの種類と特徴
  プローブのメカニズム
  セクタプローブ
  コンベックスプローブ
 2. 超音波装置の条件設定
  コンベックスプローブでみるB モード画像
  主な調整項目の効果と調整方法
 3. 検査時体位
  基本姿勢
  姿勢の影響

Ⅳ章 心血管エコーの手技
 1. 下大静脈の評価
  下大静脈の評価の意義
  下大静脈の計測
  米国心エコー図学会のガイドライン
  妊娠時の下大静脈
 2. 心拡大の評価
  左室径の計測
  コンベックスプローブによる左室の計測
  心電図による左室径の計測時相
  左室径の基準値
 3. 心収縮力の評価
  LVEF の見方
  胸骨左縁長軸像
  Teichholz 法で算出するLVEF
  M モードで算出する左室内径短縮率(fractional shortening;FS)
  Modified Simpson 法
  左室収縮能の低下を見逃さないために
 4. 肺野の評価
  肺野エコーの原理
  肺野エコーの方法
  肺野エコーの診断精度
 5. 大腿静脈の評価
  エコーによる大腿静脈評価の意義
  下肢血管エコーの方法
  妊婦で行う際のポイント

Ⅴ章 ルーチンでの心血管エコーの使いかた
 1. 正常
  正常妊娠における心血管エコー所見
  心血管エコーの進めかた
 2. 妊娠悪阻
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  症例提示
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 3. 分娩に伴う出血と羊水塞栓症
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 4. 点滴量の管理
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 5. 周産期心筋症
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  追加の心エコー
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 6. 心不全
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 7. 妊娠高血圧症候群
  症状・身体所見
  心血管エコーの進めかた
  心血管エコー以外の検査
  診断したら?
 5. 静脈血栓症
  心エコーの使いかたおよび所見

Ⅵ章 産科から循環器科へ
 産科疾患と循環
  循環から考える産科管理
  妊娠高血圧症候群を例に
  産科医にできることとその限界
  循環器内科医に求めること
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